季節ごとにおいしい食材の、おばあちゃんの知恵を皆さんと紹介したいと思います。おばあちゃんの料理には、シンプルだけれども奥深いコツがたくさん詰まっています。日常の食卓をより豊かに、そして心温まるものにするための知恵を、ぜひ皆さんにも知っていただければと思います。これからご紹介する知恵をいかして、昔ながらの家庭の味を楽しんでいただければ幸いです。
- とろろ芋は、2本の割り箸を別々に持って盛り付ける。
- きんとんは、さつまいもに砂糖を加えて軟らかく煮てから裏ごしする。
- かぼちゃは重たいもの、なすは軽いものがいい。
- 筍は、「赤ちゃん筍」が最高である。
- まとめ
とろろ芋は、2本の割り箸を別々に持って盛り付ける。
とろろ芋とうずら卵の月見などを出そうとするときに、ねばっこいとろろ芋が、なかなか思う分量に分かれず、難儀をします。一度にどっと入ってしまったり、器のふちを汚したり、また、マグロの山かけなどは、なかなか狙った位置にかけられません。
このようなときも、ちょっと昔の人の知恵を借りれば、一流の板前さんのようにきれいに盛り付けられます。それは、割り箸2本を、別々の手にもち、くるくる巻き取るようにすると、好みの量だけ取れ、これをまた、くるくるもどすようにして、器に取り分ければいいのです。
この方法は、水あめなどを取り分けるときによく使った方法で、すり鉢やおろし器についたものさえ、丁寧にすれば、みんな巻き取ることができます。
きんとんは、さつまいもに砂糖を加えて軟らかく煮てから裏ごしする。
お正月料理に欠かせないきんとんは、ふつう、さつまいもを軟らかく煮て、裏ごしにかけてからお砂糖を加えて練り上げるのが手順とされています。ところが、どんなに軟らかくても、季節によってはすぐさめてしまうため、どうしてもデンプンがねばって、裏ごしの目がつまりがちになります。
このようなとき、手慣れたおばあちゃんなら、手順をちょっと変え、砂糖を半分入れて煮てから、裏ごしにかけています。砂糖を加えて煮たったさつまいもは、すこしぐらいさめてもデンプンがねばらず、楽に裏ごしができます。これを、さらに砂糖、みりん、水あめなどで練り上げるのです。
また、砂糖の入っていないさつまいもは、砂糖を入れて練り上げるとき、どうしてもうまく混じり合いません。結局、もう一度裏ごししないと、なめらかに仕上がらず、二度手間をかけるということになります。これも、最初に砂糖をいれて煮ておけば避けることができ、一度の裏ごしできれいに仕上がるというわけです。
また、さつまいもは、アクをぬくために、皮をむきながらすぐ水につけるのがコツだとされています。その皮も、最初はうすく、二回目は皮目にそって、一本すじの見えるところまで厚くむいて、別の炒め物や、煮物、揚げ物に利用している人もいます。
かぼちゃは重たいもの、なすは軽いものがいい。
野菜の大きさと重さの関係を、自分の長年の勘で見分けられる知恵をおばあちゃんは持っています。とくに昔から、かぼちゃとなすは、対照的な選ばれ方をします。つまり、かぼちゃは大きさの割に重い、割重のものがよく、なすは、大きさの割に軽い、割軽のものがいいというのです。「かぼちゃぼちゃんこ、なすながす」などと口ずさんで覚えている人もいましたが、たしかにかぼちゃは、水に入れればぼちゃんと沈む感じなのに対し、なすはふわふわ流れていく感じのものがいいようです。
本当においしいかぼちゃは、よく栗のようだと言われるように、身がしまって、ずっしり重みがあります。なすは、煮物にしても、味噌汁の具にしても、煮くずれないように気を使うほど、ふんわりと軟らかいものがおいしいことは、ご存じのとおりです。
このほか、かぼちゃには、皮に爪を立ててみて、立たないものがいいとか、なすのヘタにトゲの多いものは種が多く味が劣るという見分け方もあります。
筍は、「赤ちゃん筍」が最高である。
筍は、「筍の子」、つまり「筍」だけでも「竹の子」なのに、そのまた子の、赤ちゃん筍がよいとよく言われます。形が小さいだけでなく、皮が黄色く、うぶ毛までやわやわとし、丸々と肥えて、まるで人の赤ちゃんのような筍が、いちばんおいしいというのです。
たしかに、このような筍は、一般に「土かぶり筍」といって、まだ土から頭を出す前の筍ですから、軟らかく、水気もたっぷりあって、筍の中では最高のものです。土から出てしばらくすると、皮は黒ずみ、節の間隔が大きく、ちょうど、成長したやんちゃ坊主のように、肉も固くなってきます。この中でも、野菜売り場で「朝堀り筍」として売っている、湿った土のついたものは、エグ味が少なく、そのまま煮て食べることもできます。エグ味は、赤土より黒土のついたもののほうが強いようです。
買った筍は、半日くらいが味の良い限度で、この時間内だったらいろいろに料理できます。しかしこれを過ぎたら、糠や白水でゆでて、エグ味を抜いてから食べます。
まとめ
おばあちゃんの知恵を使って作るとろろ芋、筍、かぼちゃ、なす、そしてさつまいもで作るきんとん。それぞれの食材には、素朴ながらも心温まる美味しさが詰まっています。昔から受け継がれてきたこれらの知恵を活かすことで、家族や友人と一緒に過ごす食卓がより一層豊かになることでしょう。ぜひ、おばあちゃんの知恵を活用して、家庭での料理を楽しんでください。ありがとうございました。