食べ物にまつわる知恵や伝統的なレシピは、私たちの日常を豊かにしてくれるものです。おばあちゃんから受け継いできた知恵は、美味しい食事を作り上げるための貴重なヒントが詰まっています。
今回は特に、大根に焦点を当ててみたいと思います。大根は日本の食卓に欠かせない食材であり、その栄養価や料理の幅広さは驚くべきものです。おばあちゃんたちが大根をどのように活用してきたのか、その知恵を垣間見ながら、新しい料理のアイディアや工夫を一緒に考えていきましょう。
- なますは大根を縦に刻み、千六本は横に刻む。
- 大根の輪切りは、面とりすると煮崩れない。
- 大根とにんじんは、一緒におろしにしない。
- 大根は、斜めにおろさない。
- もみじおろしは、大根に唐辛子を差し込んでおろす。
- 大根を苦みなくゆでるには、米粒を入れてゆでる。
- まとめ
なますは大根を縦に刻み、千六本は横に刻む。
なますは、日本最古の調理法といわれ、かんたんに言えば、大根の千切りを三杯酢であえたものです。これだけなら、子どもにでもできるでしょう。問題はその千切りの仕方です。
昔の人は、みなこれを「なますは縦に、千六本は横に刻む」ものと覚え、大根の刻み方のイロハとしてきました。つまり、なますは、味噌汁の具にする千六本などと違い、大根の繊維にそった切り方をするのです。こうすると、千六本のときのような表面のザラザラした感じがなくなり、見た目が非常にきれいになるうえに、歯ざわりも、カリっとさわやかになります。
大根の輪切りは、面とりすると煮崩れない。
日本の料理は、味に工夫をこらすことはもちろんですが、その仕上がりの形をくずさないようにすることにも、最大の努力が払われています。大根の輪切りをふろふきにしたり、煮物にしたりするとき、切り口の角を包丁でけずってまろやかにするもの、その好例といえましょう。
これは、角をまるくしておくと、煮ているあいだも形がくずれず、煮あがったあとも、美しく皿に盛りつけられるようにとの、行きとどいた心づかいによるのです。
大根とにんじんは、一緒におろしにしない。
大根の白と、にんじんの赤は、私たちの食卓を彩る名コンビをなしていますが、大根とにんじんを一緒におろしてはいけないというのには、栄養学的にみてちゃんと理由があるのです。
というのは、にんじんに含まれているアスコルビン酸酸化酵素が、大根に含まれているビタミンCを破壊してしまうからです。単なる彩りのためにせっかくの栄養を破壊してしまっては、お料理も台無しです。
では大根とにんじんの「源平なます」には、この弊害はないのでしょうか。アスコルビン酸酸化酵素は、時間がたって酸化されたり、酢につけられたりすると働きが鈍りますから、ビタミンCを破壊することはありません。「源平なます」を作るとき、にんじんを先に切って少し酢を加え、あとから大根を合わせよ、と言われているのはそのためです。
大根は、斜めにおろさない。
というのは、大根の繊維は、ご存じのように縦に走っています。そのため、大根を輪切りにして横におろしたり、斜めに持っておろしたりすると、繊維が細かく切れないで、パルプ屑のようなものと、水とに分離してしまいます。これに対し、大根をおろし器に直角に立てておろすと、繊維が細かく切断され、水や栄養分をよく含んだ、舌触りのいいおろしができます。これなら、天つゆに添えるためにほどよく汁気を切っても、大切なジアスターゼを失うことなく、ぱさぱさしたり、ざらざらしたりすることもなくなるでしょう。
もみじおろしは、大根に唐辛子を差し込んでおろす。
鍋物のつけ汁などに入れるもみじおろしは、大根おろしに、赤い唐辛子の粉を混ぜたものですが、料理のベテランは、次のようにして作ています。
大根の真ん中に箸で穴をあけ、赤い乾いた唐辛子のへたを切って中の種を出したものを、箸の先で大根の穴に差し込み、一緒におろし器でおろすのです。大根に唐辛子が均一に混じる、アイデアあふれる知恵です。
大根を苦みなくゆでるには、米粒を入れてゆでる。
田舎のおばあちゃんの大根のゆで方には年季が入っているものです。まさに一味違う味になります。
しかし、ちょっとしたコツを教われば、誰にでもすぐにできることもあります。それは大根につきものの苦みを取り去って、甘くトロっとした大根にする方法です。そのコツは簡単で、米粒を一つまみ、ゆで汁の中に加えてゆでればいいのです。こうすると、大根の苦味、辛味のもとになっている揮発性の成分が、米のでんぷんに吸い取られてしまい、食べるときにはもう苦みを感じなくなります。それに、米粒を入れると、ゆで汁がとろみを帯びてきますから、さめにくくなる利点もあるのです。いつ、だれが発見した方法か知りませんが、じつに簡単でうまい方法だと感心させられます。
この米粒やその応用である重湯を利用する方法は、ほかにも鳥の水たきがあります。これは、汁を濃くして、鳥自体の旨味が流れ出しすぎないようにすることと、保温のためです。ただし、おでんや煮しめには、汁にとろみがついて味がしみ込みにくくなるので使いません。
まとめ
おばあちゃんの知恵袋から学んだレシピやコツを実践することで、食卓がますます温かくなり、家族や友達との絆が深まることでしょう。大根を通して見えてくる、季節の恵みや家庭の温もりは、食べ物が持つ力の一端です。
今回の冒険で得た知識やアイディアを、日常の料理に取り入れてみてください。おばあちゃんの知恵は、私たちの食生活に彩りを添え、心地よい驚きをもたらしてくれることでしょう。これからも、おばあちゃんの知恵と大根の魅力に触れながら、新たな料理の旅を楽しんでいきましょう。