「食」にまつわる言い伝えや格言は、私たちの文化や生活に深く根ざしたものです。季節ごとに変わる食材やその恵みを讃える言葉から、食事の大切さや食べ方に関する教訓まで、さまざまな言葉が伝えられてきました。今日は、春夏秋冬をテーマにした「食」にまつわることわざや格言の数々をご紹介しましょう。四季折々の恵みを感じながら、日本人ならではの食の智恵を垣間見てみましょう。
- 青田から飯になるまで水加減
- 秋茄子は嫁に食わすな
- 味は塩にあり
- 小豆を煮るときはからやきに煮らせろ
- 医者と味噌は古いほどよい
- 一番座敷に二番風呂
- いもばかりは親は厭(いや)
- 鰯目ただれ鯖腐れ
- うまい物は宵に食え 腹の立つことは明日言え
- 瓜は六皮半にむくべし
- まとめ
青田から飯になるまで水加減
稲をよくつくるには、田に植わっているときの水の調節次第で出来、不出来が決まる。ご飯を炊くときにも同様。”うまくも、まずくもなる水加減”と水の大切さを説く。
秋茄子は嫁に食わすな
気候が涼しくなるにつれ、寒さに弱いなすは小形になり、ナスニンとアシンという色素が増して色が濃くなる。それと同時に糖分もわずかに増し、おいしくなる。このおいしいなすを姑の嫁いじめから食わすなという説がある。実際、なすは灰分が多く、秋の食欲にまかせて、むやみに食べるのは身体によくない。また、秋なすは種が少なく、子種が少なくなることを嫌ってこういわれた、という親心からいわれたという説もある。
味は塩にあり
食べ物の味つけは塩加減(冷めると濃く感じ、熱いとうす味に感じる)が最もたいせつで、うまくもまずくもなる。
小豆を煮るときはからやきに煮らせろ
小豆は皮が固く、内側が柔らかいのでとろ火でゆっくり煮るのがよい。からやきとは火がついたり消えたりして、ちょうどよくトロトロと煮えることから、青森地方では、なまけもののことをいう。また、水が沸騰しはじめたら加える水をびっくり水といい、これをすると早く柔らかくなるといわれている。「小豆煮るに竹の皮」ということわざもあり、煮るときに竹の皮をさいたものをいっしょに入れるとよいともいわれている。
医者と味噌は古いほどよい
医者は齢をとっているほど多くの経験を積んで信用がおける。味噌も熟成期間のすぎた、味のなじんだものほどおいしいことから”古いほどよい”に。味噌の熟成期間は、甘味噌は1~2週間。辛味噌は1年くらい。八丁味噌のような豆味噌は3年くらいである。最近は速譲法によって、1~3か月で終わらせてしまうことが多い。
一番座敷に二番風呂
ご馳走があるときは、早く座についたほうがよく、風呂は2番目に入るのがよい。さら湯の1番風呂は汗やアカだけでなく、体内のカリウム、ナトリウムなどが溶け出し、老人や子どもにはあまり好ましいものといえない。
いもばかりは親は厭(いや)
いもは大きい親いもよりも小さな子いものほうがおいしいことをさす。発芽期のじゃがいもは芽だけでなく、皮にも毒性があるソラニンが増加する。その時期の親じゃがいもには注意が必要であるし、新しい子いもは新鮮で美味。
鰯目ただれ鯖腐れ
いわしもさばも鮮度が落ちやすい魚である。いわしは目が黒々とした腹のしっかりしたものを選ぶとよい。さばは内臓に強力な消化酵素が含まれているので、死ぬとその酵素が分解し、そこに腐敗菌がついたりすると急激に繁殖し腐ってしまう。このようなことから「さばの生き腐れ」ともいわれる。そこで、さばは光沢がよく、特有のしまが鮮明な、押して弾力のあるものを選ぶとよい。
うまい物は宵に食え 腹の立つことは明日言え
おいしいものは翌日にとっておかずに、味の変わらないうちに食べたほうがよい。これに対し、腹の立つことは、時間がたつと冷静に正しい判断ができるから、翌日にまわしたほうがよい。
瓜は六皮半にむくべし
瓜は頭のほうから縦に、6回半に分けてむくと皮の厚さがちょうどよくむくことができる。
まとめ
昔から語り継がれてきた言葉、それが春夏秋冬にまつわることわざや格言です。食材や季節の移ろいと共に伝わるこれらの言葉には、日本人の知恵や生活の知恵が凝縮されています。食べ物を通じて伝えられる言葉たちは、食事の大切さや人生の教訓を伝える特別な存在です。四季折々の「食」を通じて語られることわざや格言は、食文化を支えるだけでなく、私たちの心を豊かにしてくれるのです。